魅惑への助走
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　「これ、マジウケるんだけど」


　真夏。


　人気男優・片桐出演作品のリリースが前倒しになった影響で、撮影も予定よりかなり早まることとなった。


　親会社側としては、ここらでSWEET LOVEにはヒット作を出してもらい。


　来年にかけて更なる躍進の足がかりとなるような作品を、片桐に託しているようだ。


　SWEET LOVEが求める男優像と片桐は、対極にあるような気がするのだけど。


　今は片桐人気にあやからなければならないのが、現状。


　「私、武石タケシさんのほうがいいんですが」


　陰で榊原さんに愚痴ったりもしたけれど。


　「武石さんは安定した人気があるけれど、言動が派手な分、片桐には熱狂的信者が多いからねー」


　今の力関係では、SWEET LOVEよりも片桐の方が優位。


　そんな状況もあって、片桐は脚本に私のものを指定してきた。


　親会社DREAM WORLD SOFT（DWS）からも、人気男優・片桐のソロ出演作品なので期待している等のプレッシャーが。


　これを機に片桐を、完全にDWSグループに取り込みたいという下心も、上層部にはかなりあるようだ。
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