魅惑への助走
 中には単なる性欲のはけ口だったケースもあるだろうけど。


 自分から誘った場合、相手が本当は嫌なんじゃないかって心配になって、その不安を押し殺すために有無を言わさず強引に抱くとか、そういう例もあるかもしれない。


 この迷いをテーマに、次回のAV台本を執筆するか……。


 だめだ、こんな時まで仕事のことを考えては。


 「明美、何を考えているの」


 上杉くんに見透かされた。


 「俺と一緒にいても退屈なんじゃないかって、心苦しくなる」


 私のほうがこういう面に関しては、経験値がはるかに高いのを上杉くんは悟っているので。


 自分の未熟な愛し方では私が満足できないのではないかと、コンプレックスを抱いているらしい。


 「……上杉くんこそ、そんな余計なこと考える余裕なんてないくらいに」


 コンプレックスを溶かしてあげたくて、そっとキスをした。


 「私をもっと奥まで感じて」


 そのまま両手で顔を引き寄せた。
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