魅惑への助走
 この夜、抱かれている際に出てきた「結婚」の二文字。


 まずは司法試験合格が先ってことで、口約束だけだったし。


 婚約指輪とかそういうことも、一切しなかった。


 もしもこの時、もっとしっかりとした約束を交わしていれば?


 もう一度強く抱かれていた私は、いつまでもこうやって一つになっていられることを、当たり前だと信じていた。


 人間の気持ちはいつしかうつろうものであるということを、深く考えてはいなかった。
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