魅惑への助走
 「チープ? どこが? この前のりらさん作品、上層部にも大好評だったじゃない」


 「あれは! ……りらさんのアドバイスがあったからで」


 高評価だった、私の脚本作品。


 だけど現場でりらさんからのアドバイスにより、アドリブで展開も変えたりしたので……。


 自信を持って「私の作品」と言い切ることはできずにいた。


 監督は榊原さんだったし。


 「明美ちゃんはまだまだこれからでしょ。今までは短編オムニバスものばかりで、複雑な話にはできなかったわけだし」


 榊原さんの言う通り。


 私は経験を積むために、まずは短編の執筆ばかりだったため。


 当然カップル周辺のみ、最小限の登場人物と、シンプルな展開のものしか書けなかった。


 「これから長編のオファーが普通になると思うから。書ける範囲が広がるって」


 通常DVD一本分、一時間ちょっとの作品。


 表現できる内容は、はるかに多くなる。
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