魅惑への助走
 「もしも……の話だけど。彼が将来、有名な弁護士になって。重大な事件を担当した際、敵対勢力から脅迫材料にされる、ってこともあるから、よく話し合ったほうがいいかもよ」


 「私がAVの仕事をしていることが、ですか」


 「……」


 確かに将来、上杉くんが弁護士として、凶悪で強大な敵と戦う場合。


 敵は絶対に、上杉くんの弱点を調べ上げるはず。


 その頃私が上杉くんと結婚していたとして、過去にAVの仕事をしていたと告発されたら?


 犯罪行為ではないとはいえ、スキャンダルとして上杉くんの行く手を遮ってしまうかもしれない。


 私が足かせとなって……。


 そんな未来を思い描き、不安に駆られる。


 まずは午後からの業務について、頭の整理をしておかなければならないのに。
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