魅惑への助走
 海を眺めながら、ぼんやりと物思いにふける。


 上杉くんとの、これからのこと。


 いや、それ以上に。


 ついAVシナリオの構想を練ってしまう私。


 性行為のシーンを充実させる以外にも、そこまで至る過程をもっとロマンティックに描きたいと願っていた。


 とはいえ予算の都合上、こうやって海まで来て撮影するのも一苦労。


 AVという一種の裏稼業である以上、テレビドラマや映画のように、堂々と屋外でロケをやりにくいのが現状。


 公の場所ではなかなか許可が下りないし、無許可でやると路上ゲリラライヴのように違法行為となり、罰せられたりもする。


 それはさておき。


 今は妄想に浸りたい。


 たとえば、私は三角関係に悩む女性で。


 相手は彼氏と、その彼氏の血縁関係にある男性とか。


 兄、いや父親だったらもっとイケナイ関係かも。


 禁断の三角関係モノ。


 また別の設定も浮かんできた。


 波音が前世の記憶を揺り動かして、今の幸せを捨てて海へと帰ろうとする女を、男は引き止めて……。
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