魅惑への助走
 まずは私も仕事。


 通勤ラッシュの時間帯は過ぎているので、国道はさほど混雑しておらず。


 隣県へと至る直線道路を、快適に走行していた。


 「雨?」


 自宅付近は曇り空だったのに、こっちは直前まで雨が降っていたのか、路面が濡れていた。


 と、その時。


 私は二車線道路の右側を直進していたのだけど、交差点にて、右折を試みた対向車が大きく前にせり出してきた。


 「危ない!」


 このまま直進しては衝突するので、私はブレーキを踏んだ。


 左側によけようかとも思ったけど、併走している車がいるのでそれは無理。


 ブレーキを踏んで衝突を避けるしか方法はなかったので、強めに踏んだところ。


 折からの湿った路面になんとタイヤがスリップしてしまい、車は反転して対向車線に飛び出したのだ。


 (うそ……)


 制御不能になっている間の時間が、異常に長く感じられた。


 どうすることもできないでいると、車は180度くるっと回り、対向車線にせり出していた車とは別の、奥から直進してきた車に接触。


 私は交通事故を起こしてしまったのだ。
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