魅惑への助走
 「すみません!」


 衝突時に双方若干スピードは出ていたものの、シートベルトを締めていたため、私は無傷だった。


 とりあえず車を路肩に移動し、ぶつけた相手にお詫びを入れる。


 相手も車を降りてきた。


 「現場に向かう途中で急いでいるから、手短に済ませたいんだよね」


 まずは警察に事故報告の電話を入れ、その後当事者同士で名刺を交換し、事故状況をお互い確認する。


 相手の人は地元の建設会社の社長で、これから現場へ一人で向かうところだったという。


 「何だいDWSって。外資系企業?」


 私が渡した名刺を見て、尋ねられた。


 「いえ……。違います」


 特に男性の場合、DWSという企業名を耳にしただけで、アダルトビデオを連想する人は多いが。


 今回は全く気づかれなかったようで一安心。


 相手の車には同乗者はおらず、運転手もケガはなさそうだが、車の運転席側のドアに線上痕がくっきり残っている。


 私のほうも、運転席側バンパーがかなり損傷していた。


 警察到着まで予想外に時間がかかったが、後から知ったことによると、その国道は二つの自治体の境界線を成しており。


 管轄がどちらの警察署になるか、事前に確認作業が必要だったようだ。
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