魅惑への助走
 現場検証終了。


 あとは修理工場に車を出して、修理にいくらかかるか見積もりをしてもらう。


 同時に保険会社にも連絡して、事故の報告も必要。


 ぶつけた相手である建設会社の社長は、これから現場に急行しなければならず、車も動くことだし修理に出すのはそれからにするということで立ち去った。


 私のほうも被害は小さく、ちょっと傷ができたくらいなので、運転に全く支障はない。


 車の傷は小さくとも、初めての交通事故しかも加害者になってしまったということで、精神的にかなり参っていた。


 業務中の事故ということで、SWEET LOVEに連絡しなければならないし。


 向かう途中だった先方にも、遅刻の連絡を入れておかなければならない。


 そして保険会社……。


 インターネットでたまたま目にした、掛け金の安さが売りのところだった。


 一応大手保険会社の子会社ではあるらしいけれど……安さゆえにユーザーが殺到しているのだろうか。


 事故の連絡を入れても、ずっと話し中。


 仕方ないので自動音声システムに切り替えて、事故の報告をプッシュダイヤル式で行なっておいたものの、すぐに折り返しの電話が来るはずが待てども待てども音沙汰なし。


 ますます不安になってきた。
< 333 / 679 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop