魅惑への助走
　事故を起こしたことに対する後悔と、これからどうなるんだろうっていう不安。


　そしてなかなか折り返しの連絡が保険会社から来ないというイライラ。


　そんなことが重なって、ロケ地との話し合いの最中もなかなか集中できなくて困った。


　このような時、彼氏が自分より社会経験が浅いというか無いのって、非常に頼り甲斐がないことが身につまされた。


　困っている時はどうしても、彼氏に助けてほしいと望んでしまう。


　少なくとも有効なアドバイスをしてほしいと。


　ところがさっき電話してみたところ、まだ寝ていたのを飛び起きてくれたまではよかったけど、向こうは車の免許は持っているものの完璧なペーパードライバーで。


　車のメカニック面なことも保険に関することも、全くといっていいほど知識はなかった。


　すごく心配してくれて、慰めの言葉はかけてくれるのだけど。


　それだけでは事態の解決には繋がらない。


　その後職場に連絡を入れた際、榊原さんが電話に出てくれて、事故の第一報に驚いた後、保険会社とのやりとりに関してためになるアドバイスをしてくれた。


　誰にも人生経験や体験の蓄積の差はあるため、彼氏に全てを要求するのはわがままだとは自覚しているのだけど……。
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