魅惑への助走
 ……。


 「ありゃ~。またガターだ」


 「すみません。下手くそで」


 「Gマークなんか気にしない気にしない。団体戦じゃないんだし、のびのび投げたらいいよ」


 同じレーンのおじさまたちが慰めてくれた通り、私のスコア表にはガターを指す「G」マークがずらりと並ぶ。


 久しぶりのせいか、なかなか勘が戻らない。


 力みすぎて十本のピンにたどり着くまでに、ボウルが脇の溝に落ちてしまうガターを連発。


 逆に先頭のピンのど真ん中に命中し、奥の二本が左右離れてしまう「スプリット」も何度かあり、スコアが伸びない。


 ……私が抽選で入れられた第13組は、13番レーンで交互に投球を繰り返す。


 13組のメンバーは四人。


 30代のかなりイケメンと、40代後半のひ弱そうなおじさまと、50代の頭の薄いおじさまの四人。


 彼らは皆ボウリングが上手で、スコア100は楽々越え、150点に迫る勢い。


 「僕らボウリング世代で、学生時代は連日ボウリング場に通ってたからね。葛城(かつらぎ)さんもそうですよね?」


 30代のイケメンは、葛城という名前らしい。


 「いえ、自分はその世代じゃないと思いますが。それでもそこそこボウリングは流行っていて、飲み会の二次会なんかでよくボウリング場行きましたね」
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