魅惑への助走
 「ストライ~ク!」


 同じレーンの三人のみならず、周囲の参加者が私のスコアを見て呆然としている。


 二ゲーム目。


 正確に言えば本選一試合目。


 先ほどの予選会の投球により、すっかり勘を取り戻した私は。


 かつての鋭い投球が甦っていた。


 先頭のピンの斜め45度くらいにボウルをカーブさせて当てると、さほど力はなくともピンは上手くドミノ倒しとなり。


 ストライクが取りやすくなる。


 その投げ方とタイミングを次第に取り戻していったため、ストライクを連発するようになった。


 ガターはゼロになり、スプリットも激減。


 一本か二本残っても、抜群のコントロールで二度目で全て倒し切り、スペアを獲得。


 得点がぐんぐん伸びていく。


 本選一試合目のスコアは、175点。


 これにハンデ80点を加えれば、なんと255点。


 「プロテスト受験できるようなスコアじゃ?」


 周りのおじさんたちが呆気に取られている。


 二試合目もさらに点数を伸ばし、185点。


 ハンデをプラスして、265点。


 もはや誰も私のスコアに近づくことはできず、ぶっちぎりの大差でボウリング大会優勝を飾った。
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