魅惑への助走
 「優勝は……、SWEET LOVE所属の、武田明美さん!」


 会場内のロビーで、表彰式が行なわれた。


 ぶっちぎりの優勝を果たした私は、優勝賞品を授与される。


 包装されていて中味は不明だけど、何やら豪華な電化製品のようだ。


 「明美ちゃーん。予選会八百長したんじゃないの!?」


 賞品を授与され、座席に戻った私を周囲のおじさまたちがもみくちゃにする。


 予選会と本選のスコアのあまりの違いに、わざと手を抜いた疑惑まで噴出。


 「ははは……。予選の時のマジで悔しそうな表情からすると、ごまかしていたようには到底見えないけどね」


 葛城さんが笑っている。


 確かに予選会は、久しぶりのボウリングということもあり、あまりに低いスコアで本気で焦った。


 本選突入後は感覚が戻ってきて、過去の投球ができたからなんだけど。


 それにしてもハンデのおかげだった。


 「でもさ、ハンデなしにしても。全体で三位のスコアなんだよね。どっちにしてもすごいよ」


 ちなみに葛城さんは、この日三位入賞。


 その葛城さんのスコアは、私のハンデなしのスコアよりちょっと上。


 ハンデがなかったら私は三位で、葛城さんは二位準優勝に繰り上がる。


 その後は当初からの予定通り、飲み会に無理矢理拉致された。


 できればボウリング大会だけで帰宅したかったけれど、優勝者が祝勝会からの帰宅は許されなかった。
< 342 / 679 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop