魅惑への助走
 「なんかエッチなこと妄想してない?」


 「えっ、いやそんなこと考えてません」


 上杉くんがAV男優だったら……などとシミュレーションしていて、ちょっとの間上の空だった。


 何やら葛城さんに話しかけられても、適当に相槌を打っていただけだったかも。


 「明美ちゃんって仕事柄、AV男優に口説かれることとかないの」


 「それは基本、ご法度なんですよ。性産業ゆえ性的に乱れた職場と誤解されがちですが、きちんとけじめをつけないと、業務に支障が出ますからね」


 取引先でのセクハラもたまに遭遇するし、片桐のような破廉恥な男優も存在はしているものの、SWEET LOVEは松平社長が厳しいため、一定のモラルは保たれている。


 ただ普通のOLやってる女の子よりは、性的なものを見聞きする機会は多いため、エッチなことに対する耐性が強くなっているというか。


 ちょっとやそっとのことじゃ動じなくなるどころか、感覚が麻痺しているような気がして将来がちょっと心配だったりもしている……。


 そして不安を払拭するための勢い付けのためか、ジョッキのビールを一気に飲み干して景気付け。
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