魅惑への助走
 「ん……」


 いつの間にか自宅にたどり着いて、ベッドに寝かされたようだ。


 早く眠りたかった。


 このまま心地よいほろ酔い状態のまま、後は眠りに落ちていくだけ……。


 のはずだった。


 (あ……!)


 肌の上に刺激を感じた。


 生暖かい感触が私をゆっくりと侵食している。


 この夜の私は適度に酔っているため、いつもより感度が高い。


 触れられているだけで、おかしくなりそう……。


 十分に揺さぶられてしまった体はもう歯止めが利かず、早く始めてもらいたくて、私の反応を確かめている上杉くんの顔に触れて、誘うかのように。


 「早く……」


 いつもよりもったいぶった指の動きにじらされて、ついねだってしまう。


 「素直だね」


 !?


 「酔ってそのまま寝られたらがっかりだったけど、ここまで楽しませてくれるとは嬉しいよ」


 「え……」


 上杉くんの声じゃない。


 夢と現実の中間付近を漂っていた意識が、一気に現実へと引き戻された。


 意識を取り戻すと、信じがたい光景が目に飛び込んでくる。


 薄暗いルームライトに照らされた中、私の敏感な部分を確かめるかのように、反応を確かめているのは。


 (葛城さん……!)
< 363 / 679 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop