魅惑への助走
 部屋に入って、まずリビングに荷物を置き。


 それからシャワーに向かう。


 その前に着ているものを全て脱ぎ、洗濯槽に突っ込み、早朝にもかかわらず洗濯を開始する。


 ホテルの香りとかが何となく残っていたり、服に染み込んでいたりするのを恐れ、さっさと洗ってしまった。


 洗濯機のスイッチを入れている間に、シャワーのお湯が沸いていた。


 次はシャワー室に飛び込み、熱いシャワーを浴びる。


 髪の毛の先から、足の爪先まで。


 先ほどまでの快楽の名残が残っている全てを洗い落とす。


 体の表面のみならず、心も洗い流してしまいたかった。


 酔って開放的な気持ちになっていたとはいえ、自分のしでかしたことの重大さを徐々に認識し始める。


 (浮気……)


 浮気だなんて、特殊な人のすることだと思っていた。


 一人の相手では満足できない、好色な人とか。


 きちんとしたパートナーがいて、心身共に満ち足りた日々を過ごせていたら、浮気なんてあり得ないと信じていた。


 にもかかわらず、いとも簡単に一線を越えていた。


 彼氏以外の男性に自ら体を開いたのみならず、情熱的に受け入れていた自分が今になって思えば信じられないとはいえ。
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