魅惑への助走
「明美、帰ってたんだ」
シャワーを終え、慌しく髪を乾かしベッドに入り込んだ時、ようやく上杉くんは私に気がついた。
「遅かったね。いつもお仕事ご苦労様」
すでに午前六時を過ぎ、この時期でもすでに日の出時刻を過ぎている。
いわゆる朝帰り。
私が遅くなった真の理由など知る由もなく、上杉くんはそっと私に腕を伸ばす。
「寂しかったよ」
たった一晩いなかっただけなのに。
上杉くんは帰りの遅い母を待つ幼子のように、私に頬を寄せる。
そしてそのまま、なし崩しに肌を重ねようとする流れ。
「ごめん。さすがに今は眠すぎるから」
パジャマのボタンに伸びてきた腕を押し戻した。
「そうだよね。無理しないで、今は寝たほうがいいよ」
上杉くんはそれ以上無理強いはせず、それぞれ再び眠りに落ちてしまった。
その時の私は眠かったのも事実だけど、それ以上に上杉くんの顔を見ることができず、眠いふりをして背中を向けたままだった。
ありのままの自分を晒すと、先ほどまで裏切り行為をしていたことを勘付かれそうで怖くて……。
シャワーを終え、慌しく髪を乾かしベッドに入り込んだ時、ようやく上杉くんは私に気がついた。
「遅かったね。いつもお仕事ご苦労様」
すでに午前六時を過ぎ、この時期でもすでに日の出時刻を過ぎている。
いわゆる朝帰り。
私が遅くなった真の理由など知る由もなく、上杉くんはそっと私に腕を伸ばす。
「寂しかったよ」
たった一晩いなかっただけなのに。
上杉くんは帰りの遅い母を待つ幼子のように、私に頬を寄せる。
そしてそのまま、なし崩しに肌を重ねようとする流れ。
「ごめん。さすがに今は眠すぎるから」
パジャマのボタンに伸びてきた腕を押し戻した。
「そうだよね。無理しないで、今は寝たほうがいいよ」
上杉くんはそれ以上無理強いはせず、それぞれ再び眠りに落ちてしまった。
その時の私は眠かったのも事実だけど、それ以上に上杉くんの顔を見ることができず、眠いふりをして背中を向けたままだった。
ありのままの自分を晒すと、先ほどまで裏切り行為をしていたことを勘付かれそうで怖くて……。