魅惑への助走
 保険の件でお世話になる以上、連絡先を伝えておく必要がある。


 携帯電話の番号を教えるのはまだ抵抗があったので、会社の電話でよかったと思った。


 会社の電話だったら、話がおかしな方向へと進んではいかないだろうという安心感もあったし。


 そして葛城さんはSWEET LOVEを後にした。


 「ちょっと明美ちゃん。いきなり葛城さんと親密じゃない!?」


 オフィス内に居合わせた榊原先輩はびっくりだったようで、根掘り葉掘り尋ねてきた。


 「ボウリング大会で同じレーンになったとは葛城さんも言ってたけど、まさかあれ程意気投合していたとは」


 社長も驚いていたらしく、質問に加わってきた。


 「たまたまなんですよ。レーンが同じだったのがきっかけで。飲み会でも隣の席になって、なぜか交通事故の話になって」


 全ては偶然の出来事だったとくり返した。


 その後ホテルに行ったことには、絶対勘付かれないように。
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