魅惑への助走
 帰宅後速攻シャワーして寝たけど、その後目覚めて焼き肉屋に出かける前に、念のため持ち物は全てチェックした。


 何か忘れ物をしていないかという点と、ホテルから大急ぎで帰宅した際に、間違って余計なものを持ち帰ったりしていないだろうかという点を。


 ホテルの備品を持ち帰ったりしていたら、上杉くんに見つかる前に秘密裏に処理してしまうつもりだったけど、幸いにして何もなかった。


 携帯も財布もメイクセットも、持ち歩いている身分証明書も、バッグの中のものは全て確認した。


 そしてボウリング大会と、ビンゴ大会でゲットした景品も。


 忘れ物なんて、全く心当たりがないのだけど……。


 「ハンカチとかポケットティッシュとかですか?」


 「ハズレ」


 「え……。じゃ身につけているものですかね」


 「まあ、そんなところかな」


 靴はあの日と同じものを今朝履いて出勤しているから違うし。


 「もしかして、上着とかですか」


 最近朝夕寒くなってきたので、薄手のコートをあの時は羽織っていたかな?


 「いや、もっと下」


 「ブラウス?」


 嫌な予感がした。


 ホテルで脱ぎ散らかした際、何か忘れてきたのだろうか。
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