魅惑への助走
 次に男は、灰皿の横にあるテレビのリモコンに手を伸ばした。


 初体験は古いラブホテル。


 市内の歓楽街、昼間なので格安料金。


 高校生のお小遣いでもまかなえる金額。


 大都会ではないので周囲の目を気にしつつ、さすがに制服だとまずいので、休みの日に私服でオトナの世界へ。


 ……テレビのスイッチを入れると、画面いっぱいに映し出されたのは、裸で甘い声を出しながら。


 男優に背後から突かれながら、激しく揺れてる女優の映像。


 つまりアダルトビデオ。


 男優に「この雌豚」などと罵られながらも、言いなりになって体を開いている。


 あんな粗雑な扱われ方をして、本当に気持ちいいのだろうか。


 所詮は演技、虚構なのだと白けてしまう私がいる。


 現に私も。
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