魅惑への助走
 「タケダアケミちゃんの浮気現場を、彼氏に……」


 背後から突然、榊原さんに言われてびくっとした。


 「……どしたの?」


 「い、いえ。作品の展開を妄想しながら、ぼーっと」


 ……SWEET LOVEでの次回作に関する作戦会議中。


 寝不足もあってぼーっとしていた私は、心ここにあらずだった。


 DWS本社から、前回作が上々だったため、再度竹田朱実ちゃんを主役にした作品を仕上げるよう「お達し」があった。


 一躍人気女優の仲間入りを果たした竹田朱実ちゃんの次回作に関して、SWEET LOVE内で打ち合わせをしている。


 今回も脚本は、私が仕上げることになっていた。


 「それにしても……。最初は同姓同名で驚いたけど、明美ちゃんとAV女優の朱実ちゃん、共通点多すぎね」


 外見、雰囲気が似てるって言われる。


 それに加えて……、プロフィールとして提出された書類を目に通した時、さらに驚いた。


 結構名の知れた大学を卒業後、ライターの道を志すも挫折、生活のため昼間はOLをしながらAV女優の世界に足を踏み入れた……。
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