魅惑への助走
 「明美、クリスマスは休みだよね」


 クリスマスを目前に控えた朝。


 仕事の準備でバタバタしていた私に、上杉くんは問いかけてきた。


 「うん……。休みだけど。ちょうど連休になるし」


 天皇誕生日の祝日と連結して、週末はクリスマス連休となっていた。


 連休明け、平日数日の出勤で今度は年末年始休暇に入る。


 出勤前の突然の質問に、私は戸惑っている。


 すでにただの同居人、ルームシェア状態となって久しい。


 まさかクリスマスをきっかけに、隙間を埋めようとしているとか……?


 緊張したまま、次の言葉を待つ。


 「連休中、ゆっくりできる時間に、話し合いをしたいって思ってたんだ。時間を作ってもらえるかな」


 「……分かった」


 私の思い過ごしだったようだ。


 ……上杉くんは、決断を下そうとしている。


 完全に心が離れてしまった二人の関係を終わらせるために。
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