魅惑への助走
 「昔からのファンが離れていくのがつらい、とも言ってたな」


 ……上からの要求に叶った、「売れ筋路線の」作品を連発した結果。


 「大衆ウケを狙って初心を忘れた」「今の彼らはもはや自分が昔好きだった彼らじゃない」などと言い放たれ、古参のファンが消えていく。


 その分ファンは新規開拓すれば痛くも痒くもない、とプロデューサーは意に介さず……。


 「どの業界も似たり寄ったりですね……」


 売れるために上からの指示通りに、本当に作りたいものではない売れ筋作品を発表し続ける。


 私の場合、ただ書いているだけで読者との直接の交流はほとんどないため、ファンが付いて来るのか離れて行くのかなかなか目にすることはない。


 自分の作品が販売され、それにより収入を得る……といういわば「プロ」という立場になった今。


 製作に携わってくれる人たち、自分の作品を買ってくれる人たちの意向を第一に考えなければならないのだろうか?


 自分の気持ちは抑えたままで。
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