魅惑への助走
***


 「ね、今日こそ……」


 ベッドの上、私を見つめる葛城さんにねだったのに、


 「……俺と明美の新婚旅行は、まだまだ続いているんだから」


 また拒否された。


 そして優しく唇に触れ、キスでごまかす。


 ……この頃の私は、子供がほしくてたまらなくなっていた。


 しかし当然、一人で願っているだけでは子供はできない。


 なのに葛城さんが、子供を作ることに非協力的だった。


 「子供がいたら、明美とこうしていても夜泣きされたら、中断しなきゃならないだろ? 耐えられないよ」


 「でも私たち、もう結婚して一年……」


 「昔とは社会情勢が異なるし。別に子供いなくても困ることなんて何もないよ」


 再び唇を塞がれる。


 「それに……子供が大きくなったら、教育上よろしくないからなどという理由で、なかなか明美とこういうことできなくなっていくよ」


 「それでも、」


 子供がほしい。


 早く子供を授かるように、もっと……。


 なのに葛城さんは私の意向を無視する。


 こうして私たちが互いの体を貪るのは、生き物としての本能、子孫を残すためなどではなく、それぞれ欲望を分かち合うためだけ……。
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