魅惑への助走
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　ロンドンでの一年ちょっとの生活は、過ぎてしまえばあっという間だった。


　葛城さんが勉強のためあちこと飛び回っている間、私には数多の自由な時間が与えられた。


　慣れない異国での生活、一人で身の回りのことはこなせるよう語学力を高めるため、英会話学校へ通った。


　そして……日本の担当編集者さんと連絡を取り合い、小説家としての活動。


　案外忙しい毎日。


　たまに葛城さんが休みの日は、未だに続く新婚旅行を満喫するかのように、ロンドンのみならず英国全域を巡った。


　ロンドンの主な観光名所は言うまでもなく、千キロ近く離れたスコットランドの歴史的建造物を見て回ったり。


　葛城さんの今後の活動を見据えて、イングランド・プレミアリーグ強豪の試合も観戦しに出かけた。


　日本とは異なり英国のサッカー場は、屈強な男たちばかりで怖かった。


　女性や家族連れでも楽しめる日本のJリーグとは、雰囲気が全然違い一種のカルチャーショック。


　毎年六月末に開催されるテニスの全英選手権、通称ウィンブルドンにも連れて行ってもらった。


　トーナメントが進むにつれて、チケットはなかなか手に入らないと聞くけれど……葛城さんはどこかから入手してきた。
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