魅惑への助走
「ん? それが何か?」
当たり前でしょ、と梨本さんの表情には書かれている。
「実は私……。もうネタが浮かばなくて」
「ネタ? 今までの作品の踏襲で無問題だけど?」
「いつも同じ展開なのもちょっと……」
いくら何でも、毎回毎回同じような内容では。
飽きられるんじゃないかと心配になる。
「うちの読者は、変革を求めないの。王道のハッピーエンドのラブストーリー。舞台はオフィスでありさえすればみんな喜んでくれるんだから」
「今はよくても、いずれマンネリ化で見捨てられるのでは」
「王道から外れたものを書いて賛否両論を巻き起こし、拒絶反応を招いて一定数以上の読者に逃げられるよりは、王道を書いていたほうが安全策なのよ。たとえマンネリであろうと」
梨本さんは自信たっぷりに答えたのだけど、
「ですが。実際私も……。毎回同じようなヒロイン&ヒーローの話ばかりで、いささか疑問を感じていまして……」
私は意を決して異議を唱えてみた。
「そういうのを読者が好むんだから、仕方ないのよね。私たちは読者が一番喜ぶものを提供してあげるのが仕事」
梨本さんは信念が固い。
当たり前でしょ、と梨本さんの表情には書かれている。
「実は私……。もうネタが浮かばなくて」
「ネタ? 今までの作品の踏襲で無問題だけど?」
「いつも同じ展開なのもちょっと……」
いくら何でも、毎回毎回同じような内容では。
飽きられるんじゃないかと心配になる。
「うちの読者は、変革を求めないの。王道のハッピーエンドのラブストーリー。舞台はオフィスでありさえすればみんな喜んでくれるんだから」
「今はよくても、いずれマンネリ化で見捨てられるのでは」
「王道から外れたものを書いて賛否両論を巻き起こし、拒絶反応を招いて一定数以上の読者に逃げられるよりは、王道を書いていたほうが安全策なのよ。たとえマンネリであろうと」
梨本さんは自信たっぷりに答えたのだけど、
「ですが。実際私も……。毎回同じようなヒロイン&ヒーローの話ばかりで、いささか疑問を感じていまして……」
私は意を決して異議を唱えてみた。
「そういうのを読者が好むんだから、仕方ないのよね。私たちは読者が一番喜ぶものを提供してあげるのが仕事」
梨本さんは信念が固い。