魅惑への助走
「そりゃあ、あけびという存在は覆面作家だし、作品以外の何もまだファンの人たちは知らないんだし」
「そうなんです。ファンの皆さんは私の虚像しか知らないんです。ファンと私を繋ぐのは、作品のみ。しかもその作品というのも、私が心の叫びを紡いでいるものではなく、梨本さんが指示するままに書いているだけのものなんです」
「……どういうこと?」
ファミリーレストランの、窓辺の席。
午後の陽射しが強く差し込むので、ブラインドを下ろした。
「梨本さんが指示したものを、私は書いていただけです。つまり私と梨本さんとの関係は、お飾り人形とゴーストライター状態かもしれません」
「ゴーストっていうより、漫画の原案者と実際の漫画家さんって表現したほうが近いんじゃ?」
梨本さんはテーブルに頬杖をついて苦笑。
「つまり、私という表に立つ存在がなくなったとしても、梨本さんがいる限り、今後も作品を生み出していくことは可能なんですよね」
「でも読者が求めるのは、私のアイディアなんかじゃない。あけび先生の紡ぐ物語」
「結局は作者名は誰でも変わらないのではないでしょうか。先日のmagic theaterのアンケートでも、ファンは作家ではなく作品に付くことのほうが多いと証明されましたし」
「そうなんです。ファンの皆さんは私の虚像しか知らないんです。ファンと私を繋ぐのは、作品のみ。しかもその作品というのも、私が心の叫びを紡いでいるものではなく、梨本さんが指示するままに書いているだけのものなんです」
「……どういうこと?」
ファミリーレストランの、窓辺の席。
午後の陽射しが強く差し込むので、ブラインドを下ろした。
「梨本さんが指示したものを、私は書いていただけです。つまり私と梨本さんとの関係は、お飾り人形とゴーストライター状態かもしれません」
「ゴーストっていうより、漫画の原案者と実際の漫画家さんって表現したほうが近いんじゃ?」
梨本さんはテーブルに頬杖をついて苦笑。
「つまり、私という表に立つ存在がなくなったとしても、梨本さんがいる限り、今後も作品を生み出していくことは可能なんですよね」
「でも読者が求めるのは、私のアイディアなんかじゃない。あけび先生の紡ぐ物語」
「結局は作者名は誰でも変わらないのではないでしょうか。先日のmagic theaterのアンケートでも、ファンは作家ではなく作品に付くことのほうが多いと証明されましたし」