魅惑への助走
梨本さんも私と同じ経歴を所持していた。
学生時代から小説を書くのが大好きで、何度か公募に応募したものの結局受賞&デビューとはならず。
大好きな小説の世界に少しでも関わっていたくて、大学卒業後は大手出版社に就職。
何年か事務職をこなした後、突然辞令が下って子会社である携帯小説サイト・magic theaterに移動。
最初は携帯小説というものを、「低次元なメールでの会話レベルで、小説と標榜するのもおこがましい」とかなり見下していたという。
しかし業務に携わり、多くの執筆者と関わって作品をより良いものへと仕上げていく過程を経験しているうちに、考えを徐々に改めていったらしい。
当時はまだ、携帯小説というジャンルは黎明期。
今後果てしなく発展が望める分野と見据え、やりがいを感じて仕事に没頭していったようだ。
いつしか自分が小説家志望だったことすら、ほとんど忘れ去ってしまうくらいに。
「……そういう仕事をしていた分だけ、どういうものを書けば人気が出るとか評価されるとか、執筆テクニックだけは頭に入っているけど。それだけじゃいいものは書けない。文才のある作家さんには叶わない……」
「文才だけでもだめなのが携帯小説界じゃないですか。それは楠木さんが一番よく知っているはずです」
学生時代から小説を書くのが大好きで、何度か公募に応募したものの結局受賞&デビューとはならず。
大好きな小説の世界に少しでも関わっていたくて、大学卒業後は大手出版社に就職。
何年か事務職をこなした後、突然辞令が下って子会社である携帯小説サイト・magic theaterに移動。
最初は携帯小説というものを、「低次元なメールでの会話レベルで、小説と標榜するのもおこがましい」とかなり見下していたという。
しかし業務に携わり、多くの執筆者と関わって作品をより良いものへと仕上げていく過程を経験しているうちに、考えを徐々に改めていったらしい。
当時はまだ、携帯小説というジャンルは黎明期。
今後果てしなく発展が望める分野と見据え、やりがいを感じて仕事に没頭していったようだ。
いつしか自分が小説家志望だったことすら、ほとんど忘れ去ってしまうくらいに。
「……そういう仕事をしていた分だけ、どういうものを書けば人気が出るとか評価されるとか、執筆テクニックだけは頭に入っているけど。それだけじゃいいものは書けない。文才のある作家さんには叶わない……」
「文才だけでもだめなのが携帯小説界じゃないですか。それは楠木さんが一番よく知っているはずです」