魅惑への助走
 「……」


 SWEET LOVEの入るビルの玄関、自動ドアの前で深呼吸。


 部屋を出て来た時よりも、緊張が高まっている。


 暖かく迎えてくれるであろう社長や先輩、そして他のスタッフの子たちとは正反対に、きっと冷たいまなざしを私に向けるであろうのは。


 佐藤剣身。


 SWEET LOVE初の専属男優。


 私がかつて付き合っていた人。


 派手な生活に目がくらんだ挙句、私が一方的に置き去りにした人……。


 今でも私を憎んでいるはず。


 裏切りの事実は消えることがない。


 にもかかわらずそんな因縁がある相手と、これからアダルトビデオを共に製作していくことを望むとは。


 私は自分が今抱えている感情を、上手く説明することができないままだった。





to be continued……
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