魅惑への助走
 初めてのことでどうしていいか分からず、要求されるままにしているだけの私じゃ、先輩は物足りなかったようだ。


 何回か放課後呼び出され、先輩の親が留守中の家で体を求められた。


 幾度かそれをくり返した後、徐々に先輩とは疎遠になっていった。


 部活の練習試合や合同練習が忙しくて、なかなか時間が取れないとの理由付けを真に受けて、いつも連絡を待っているだけだった私。


 いつしかメールや電話も途絶えがちになり……。


 それっきりだった。


 何回かやっただけで、先輩の一番の女になったつもりでいた自分がバカみたい。


 二度と戻れないと完全に悟った時、私は何もかも忘れようと誓った。


 あんなのなかったことにしようと。


 ……初体験の時のことなど、もう二度と思い出したくない。


 臭い煙草の煙と、おぞましい性欲まみれのアダルトビデオ。


 私はその日から、煙草の煙とアダルトビデオを嫌悪するようになった。
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