魅惑への助走
 「ヴィジュアルモデル募集……」


 四月からのSWEET LOVE本格始動と同時に、社の象徴となるヴィジュアルモデル、すなわちイケメンAV男優を公募することになった。


 まずは書類選考を行ない、書類選考を突破した者と面接。


 新事務所オープンと同時に公募をスタートさせて、注目を浴びる中で大々的にデビューさせる予定なのだ。


 その募集広告を、私がデザインすることになった。


 既存のイメージに囚われないよう、「AV男優」の文字を外して、呼称は「ヴィジュアルモデル」で統一。


 アダルトな雰囲気を過度にアピールすることもせず、顔の写っていない、ネクタイを外すスーツ姿の男の画像だけを貼って。


 いやらしさを感じさせないシンプルなデザイン、基調色はブルー。


 「容姿端麗な男性って明記して、反感買わないでしょうかね」


 松平さんに尋ねた。


 「いいのよ。ちょっとシビアなくらいに書いておいたほうが。なんちゃってな人が応募してくるのを、シャットアウトしたいから」


 SWEET LOVEの今後の屋台骨を担うことになるであろう、審査合格者。


 記念すべき一人目は、絶対的エースであるべきとの松平さんの意向で、もしも応募者に満足できない時は該当者無しでも止むを得ないとのことだった。
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