魅惑への助走
 本棚の上には、だいぶ前にUFOキャッチャーでゲットしたリスのぬいぐるみと。


 今年になってからフリーマーケットで発見し、百円で衝動買いした猫のぬいぐるみ。


 殺風景な部屋の中、そこだけが癒し系の空間。


 ぬいぐるみの頭をそっと撫でてから、シャワーの準備。


 急いで汗を洗い流し、パジャマに着替えてベッドに横たわり、携帯電話を手にする。


 そろそろ上杉くんも家に戻っている頃かなと予想し、メールしてみる。


 「お疲れさま。今日は楽しかった。また食事行こうね」


 送信完了。


 上杉くんのことは、高校三年次に同じクラスで、「川中島コンビ」とかからかわれていたのは何となく覚えていたものの。


 さほど仲良かったわけでもなく、卒業後は全く連絡を取っていなかったので、再会にも驚いたけど、あれほど話が続いたのにもびっくり。


 数分後、上杉くんから返信が。


 「お疲れさま。今日は高校時代のことをいろいろ思い出せてよかった。武田さんの都合のいい時に、また連絡して」


 社会人である私の都合に合わせてくれると言う。
< 94 / 679 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop