ひゃくぶんの、いち。
昼前の通学路は静まり返っていて、閑静な住宅街を横切っているからでもあるのだけれど、人を見かけることすらない。
二年と半年近くこの道を通っていて、誰かとすれ違わない日なんてなかった。
この時間帯だからなのか、たまたまなのかはわからないけれど、私一人が時間の流れから切り離されてさ迷っているように感じる。
それも、見慣れた懐かしい校舎が近付くにつれて薄れていくけれど。
まだ蕾すら見えない桜の木の下、校庭の四方、校舎沿い。
団体であったり、二人や三人のグループであったり、同学年の人達の姿を見つけて、足が止まる。
あの中に踏み込んで、羽柴くんをさがす…?
学校に行けば羽柴くんに会えるなんてどうして考えられたのか。
無理だ。だって、目も耳もまともに動いてくれるのは左側だけなのに。