ひゃくぶんの、いち。


賑やかな声が聞こえる。

きっと、以前の私なら羽柴くんの音を拾おうとした。


楽しげな姿が見える。

きっと、以前の私なら羽柴くんの背中を見つけようとした。


出来ないとしても、出来るかもしれなかったから。


今の私は違う。

出来ないとして、やってみてもきっと出来ない。


竦む足がようやく動いたと思うと、景色は一歩前のものに戻っていた。

伸ばしかけたはずの手は、スカートを掴んでいた。


< 13 / 20 >

この作品をシェア

pagetop