ひゃくぶんの、いち。
行かなきゃ、伝えなきゃ。
告白したいんじゃない。
好きだなんて、この気持ちのいちぶんのいちも伝えたいわけじゃない。
ただ―――
「坂崎さん」
怖じ気づいて、怯んで、気が付いたら校舎に向けていた背中。
左耳には鮮明に、右耳には淀みかけて届いた声は、絶対に聞き間違えるはずのないもの。
「ね、坂崎さん。来るって聞いてたのに来ないから探してたんだ。外にいられたら見つからないはずだ」
「っ…聞いたって、誰に…」
「誰って、先生だけど。もしかして坂崎さんが聞いてなかったの」
卒業式の日に学校には行くけれど、式には出ないって伝えていたのに。
あの先生、本当に、抜けてる。
振り向けなくて、ただ嬉しくて笑ってしまう。
成り立たなかった会話が、今は繋がってる。