ひゃくぶんの、いち。
あの日だって、そうだった。
放課後の教室で、偶然に奇跡みたいなタイミングで羽柴くんと二人きりになれた。
こんなこときっと二度とないと思ったから、後悔はしたくなかったから、勇気を振り絞って言ったの。
『羽柴くん、好きです』
震える手を握り締めて、火照る頬に意識が拐われないように唇を噛んで。
羽柴くんの瞳を見つめていた。
でも、羽柴くんは言ったんだ。
返事なんて、してくれなかった。
『坂崎さん、髪切ったの?』
私の名前を知っていてくれたこと。
伸ばしていた髪をばっさりと切ったこと。
知っていてくれたんだよ、好きな人が。
期待するでしょう。もっと好きになるでしょう。
それが、恋を終わらせなきゃいけない合図だとわかっていても。