ひゃくぶんの、いち。
じゃあね、って今度は笑って手を振る。
私から、前は羽柴くんにさせてしまったことを。
「坂崎さん」
羽柴くんの横を抜けて、すれ違う刹那。
最後の最後まで、羽柴くんの声には反応してしまう自分に心底呆れた。
「坂崎さんは変わらないままで、ずっと坂崎さんだよ」
思わせ振りも期待の種もない、きっとそれが羽柴くんの答え。
足音が遠ざかって、一度振り向いた時には羽柴くんの背中は見えず、校庭の中から見つけ出すことも出来ない。
「…ありがとう」
届かなかったけれど、今度はきっと、羽柴くんの背中を忘れられるから。
本当は、ずっと大好きでいることが
どうか、彼にひゃくぶんのいちも伝わりませんように。