ひゃくぶんの、いち。
左耳と比べると、何枚ものフィルターを通したように音がぼんやりとしか聞こえない右耳。
シルエットとしてしか見たものを認識することが出来ない右目。
ほぼケロイドに近い瘢痕は右頬から首筋、服に隠れた腕や腋の下へと流れている。
もともと、体に傷があってもあまり気にすることはなかったのだけれど、これほど大きな怪我をするとは思っていなかった。
袖を広く余す右腕は、半分も残っていない。
「大丈夫。きっと、大丈夫だからね」
「…うん」
この姿を見て、羽柴くんはどう思うだろう。
一番仲の良かったあの子は、また私の名前を呼んでくれるかな。