スリーアウトになる前に。
「元カノ?」
冷たい声で聞くと、ため息が返ってきた。
「より戻したいとか最近言われてて。でも他に好きなやつできたとかって言ってきては結局戻ってくるって、なんだかんだ繰り返してたんですよ。で、スリーアウトでもう終わりにしようって決めたんで」
「野球なの? サッカーはどうしたの」
「ですよね。イエローカード2枚でスパっと切るべきでしたね」
自嘲気味に笑いながら言う。
「なんで許しちゃうの? 惚れた弱み?」
「向こうから来てくれるとかレアケースですからね、俺の場合」
「ふーん。いつもは強引に口説いちゃうの?」
「なんですか、それ。なかなかね、相手にしてもらえないんですよ、タイプの女性には」
「タイプって?」
「賢くて自分に自信があって余裕のある感じ、ですかね」
「そうなんだ」
その彼女はそんな感じじゃなさそうね、確かに。そういうのでゴタゴタしててほかの子口説いちゃうのかな。めんどくさいカップルだね。