スリーアウトになる前に。
夜更けに、腕枕でゴロゴロとピロートークをする。
やっぱりいいな、この腕。マシンで鍛えすぎてない程よい筋肉。
「あの時強引に迫って1回でもやってたら、俺の人生違ったかなぁとか、後悔してたんですよね」
後悔という割に楽しそうに隣の男はつぶやく。
「結婚式の後?」
「いや、学生の時。無理ですけどね、妄想としての後悔というか」
なにそのややこしい後悔。でもそうね、そういう一度のことで人生変わってたりするかもしれない。
「こないだも結局なにもできなかったんですけど。まぁまだツーアウトだってことにして。スリーアウトまでは頑張るかって。野球に魂売ってまで、頑張ってよかったです」
そうなんだ。頑張ってくれてよかったよ。
「酔った勢いだったら信用できなかったかもしれない。若くして出世して、調子乗って女の子落としまくってるのかもって疑いそう」
「鬼畜ですね、それ。イケメンだったら最高ですね」
明るく笑いながら、彼は夢見るように言う。