スリーアウトになる前に。
「あれ? 知り合い?」
リサが不思議そうに私に振り向いた。
「大学の後輩だったの。香の会社の人なんだ?」
何気なさそうに応えておく。詮索してこないよね、リサは天然ほんわかちゃんだ。
「そうなの? すごい偶然だね」
「沢田の先輩ですか? サッカー関係?」
リサと話していた男の人に聞かれた。
「大学でフットサルやってたんだよね、亜由美」
リサに言われて頷くけど、卒業以来全くやってないな。
「あいつ今でもやってるから、誘われるね」
「いえ、私は今は全然」
手を振って否定した。私はそこまでアクティブじゃない。
「そうなんだ。沢田はサッカーバカ全開ですよ、今も」
「仕事も活躍してるのにすごいね。チームリーダーになったの、武田くんだって同期で一番って香に聞いたよ。沢田くんてそれより早いくらい?」
「俺の場合はたまたまタイミングだよ。沢田もそうかな」
「運の強さも実力のうち、だね」
うふふとリサが笑って、その話は終わりになった。武田くんというその人は、「二次会も来てね、2人とも」と念押ししてから会社の人達の方に戻っていった。