公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
逞しい筋肉質の胸や首筋から、私を惑わすバラの香りがする。
男らしくも繊細で美しい指先が、巧みに肌を刺激して、深部からはジワリと蜜が溢れ出した。
愛しい人に抱かれる喜びに頬は上気し、震えるほどの喜びが体を駆け巡るが、ほんの僅かな寂しさがあることも否めない。
ジェイル様も私を愛してくれているのだと思っていたのに、すべては企みにすぎなかったのね……。
甘く喘ぎながら瞼を開ければ、目の前には瞳を潤ませた麗しき顔。
その唇はなにかを堪えているかのように、真一文字に引き結ばれていた。
どうして、そんなにも切なそうな顔をするのだろう……。
「ジェイル様……」と問いかけたその刹那、指を絡めた手を強く握られ、下腹部に痛みが走り抜けた。
「ああっ!」
破瓜の痛みに呻いた私を、彼は強く抱きしめる。
私の耳に唇を当て、溜め込んでいたものを吐き出すかのように思いの丈を打ち明けてくれた。
「クレアを心の底から愛している。未来永劫、手放しはしない。これだけは謀の外にある、不変の想いだ」
胸が歓喜に震え、涙が泉のように湧いて溢れた。
腹黒い彼だけど、ここにある愛だけは本物なのね……。
痛みと快感と幸せに揺られながら、唇を合わせて心に誓う。
黒い企みの中でも、その愛を信じ、私は彼のために生きていく。
【完】