公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~
ジェイル様に叱られるという理由で、私は洗濯をさせてもらえなかった。
「クレアさんは、ジェイル様のお世話をなさってください」とも言われて洗濯室を追い出され、私は唇を引き結ぶ。
ジェイル様のお世話をしろと言われても……。
彼を私に執心させるという思惑のある私としては、もちろん彼に世話を焼きたい気持ちはある。
しかし、それもさせてもらえないのだ。
通路を引き返して、階段を上り、三階の南側の廊下に足を進める。
廊下の中ほどにある扉の先がジェイル様の寝室で、そのドアの前に立つと、どうせ今日も追い払われるだろうと分かっていながら、ノックした。
中からすぐに顔を出したのは、ジェイル様の近侍。
仕事の補佐から屋敷の鍵の管理、身の回りの世話までなんでもこなしている細身の三十代男性で、彼は使用人たちから『オズワルドさん』と呼ばれている。
いつも深緑色の上着に茶色のズボンを穿いて、黒っぽい短めの髪は、前髪からすべてを後ろに流していた。
彼はゴラスでの視察にも同行していた側近で、私の印璽を本物かどうか見極めていた人でもある。