公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

私を見るとオズワルドさんは、『またか』と言いたげに、知的な面立ちの眉間に微かに皺を寄せる。


「オズワルドさん、ジェイル様の朝のお支度を私にやらせてください」

「無用だと言ったのは、これで五度目ですが」

「私は侍女として働くために、この屋敷に来たのよ」

「あなたがなにをして、なにをしないのかを決めるのは、ジェイル様です。それに従ってください」


やはり今日も私には、なにもさせてくれないようだ。

都の男性貴族は侍女をはべらせてハーレム状態だと聞いたのに、旅人の話は嘘だったの?

それとも、ジェイル様が特別に女性に興味を持たない男性なのか。

私としては、純潔を早々に散らされることも覚悟の上でついてきたというのに、彼は私を近寄らせない。

寝室と執務室への立ち入りも禁じられている。


主人の世話の代わりに私に言いつけられたことは、勉強だった。

この屋敷の一階には広い書庫があり、『そこで知識を身につけろ』と命じられたのだ。


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