公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

「晩餐用の料理よ。よくできたと思うんだけど、どうかしら。味見してくれる?」


小皿に料理をよそい、調理人たちの手に押しつける。

困っているような、怒っているような顔をしながらも、彼らは渋々味見してくれた。


「味は悪くないですよ。しかしですね、舌平目のムニエルにはホワイトソースをかける予定でしたし、ジェイル様のご帰宅時間に合わせて調理する方が断然美味しいのに……」


ジェイル様は今、王城に出向いている。

彼はよほど優秀なのか、国王の一番側で政務の補佐をしているそうだ。


貴族たちがそれぞれの領地の田舎屋敷から、王都の町屋敷にやってくるのは、秋の収穫祭を終えた頃で、男たちは議会に出席し、女たちはお互いを訪問して交流する。

サロンや各種宴も頻繁に催され、それは春まで続くと聞いた。

ジェイル様を含め、国王が認めた男性貴族だけはその範疇になく、年中都に暮らして国に仕え、領地のことは他の家族に任せているらしい。

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