手のひら王子様
「お散歩行こっか?」


話をそらしたくて、無理矢理に話題を転換させる。



「おうっ。いいで~。お散歩デート!」


すっかり舞い上がってる椋太朗。



それがわたしの心情を察してワザとなのか、ホントに浮かれてるのかはわからない。



言うまでもなく、後者なんだろうけどさ……。



何であれ、話題が切り替わったことに一安心。



お散歩お散歩!


ってはしゃいでる椋太朗。



嬉しそうにしてるとこ悪いけど、



「椋太朗はバッグの中だからね」



そう言って椋太朗をカゴ型のバッグに放り込む。






「桜菜の肩がいいー!!」



道中ずっとバッグの中から聞こえる叫び声……。



バッグの中はさすがに可哀相だけど、



まさか人前で肩に椋太朗を乗せて歩くわけにはいかない。




肩の上で自分の意志でペラペラと喋る人形……。



肩に人形を乗せて人形とお喋りするイタい女の子……。




わたしとしてはどっちもヤだ。



「うるさいうるさい」


「ぅわっ! 桜菜ぁぁぁ!!」



あんまりに駄々をこねまくるもんだから、椋太朗入りのバッグを思いっきり振り回してやる。
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