手のひら王子様
「桜菜のアホ……」


力無い声を出しながら、椋太朗がよろよろとバッグの縁に体を乗り出してきた。



めちゃくちゃ恨めしそうな顔でわたしを見上げながら……。



「やっぱり桜菜は俺のことなんか嫌いなんやぁ……」



思いっきり沈んじゃってるよ……。



「わ、わぁ~。いつ見ても大きい家だなぁ~」



またもや話題を切り替えようと、わたしは自分の右手に広がる長い塀で囲まれた家を指差した。



ここいらで有名な大豪邸。



わたしにはもちろん無縁なわけだけど……。



今はとりあえず話を逸らせればいい。



「こんな家、どんな人が住んでんだろねぇ~」



そんなことを思いながら椋太朗に話を振ってみる。



そしたら、バッグのふちからわたしを見上げていた椋太朗がにっこり笑った。



その笑顔の意図がわからず、わたしは首を傾げた。



「ここ、俺ん家」


「…………」



無視決定。


何も言わず、表情も変えずにスタスタと歩いていくわたしに、



「待て待て待てっっ!! ホンマやって!!」



無駄に大声をあげる椋太朗をやっぱり無視。



ホント……中身も外見もチビッコだ……。
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