手のひら王子様
「嘘と思うんやったら玄関まわって表札見てみぃ!」


「……ハイハイ」



ムキになって言い返してくるから余計に軽くあしらいたくなる。


椋太朗は、そんなわたしの態度が余程気に入らないらしい。



玄関、玄関!!



って、うるさくて仕方ないから椋太朗の希望通り豪邸の玄関……ていうか門まで回ってやる。




そして、



「ほらなぁ? だから言ったやろ?」


「…………」


見上げる程の大きな門の横には、大理石の表札に彫り込まれた


『志倉』


の二文字。



呆然と門を見上げてるわたしに、



「桜菜もいずれここに嫁いでくんねんでぇ~」




弾むような大声で言ってくるのが鬱陶しい。



「何言ってんのよ……」


「鼻で笑うなやぁ! 俺は本気で言うてるんやでっ!」


「わかったわかった」


「桜菜~!!」



喚く椋太朗とあしらうわたし……。



人が居ないのを良いことに、バッグに向かって叫んでるわたしの背後から、




「……何かご用ですか?」



かけられた声で慌てて振り返った。




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