手のひら王子様
「なんで逃げたのっ? 余計怪しいよ……」
結局、椋太朗の自宅と思しき大豪邸から貧相な我が家まで走って帰ってきたわたしたち。
椋太朗に促されるまま走って来たのはいいけど、
なんで逃げる必要があったのか……。
「それに、さっきの男の人。アンタのこと知ってるみたいだったし」
門から出て来たあの男の人は、椋太朗の声を聞いて確かに、
椋様
って、呼んでいた。
それを聞いた椋太朗の表情は、どことなく曇ってるみたいで椋太朗らしくない。
「あのまま椿雪(はるゆき)に見つかってたら俺は連れ戻されてしまう。俺、まだ戻らへん」
椿雪ってのはさっきの男の人みたい。
その椿雪さんに見つかると、椋太朗はさっきの大豪邸に強制送還……。
……椋太朗が寝てる間に置いて来ようかな。門の前に。
「桜菜……今、怖いこと考えてるやろ?」
「…………」
チッ……。
勘だけは良いんだから。
何も言わずに目を逸らしたわたしの耳に、
「否定しろよっ! 桜菜ぁ~!!」
いつもみたいな無駄にうるさい声が聞こえてきた。
結局、椋太朗の自宅と思しき大豪邸から貧相な我が家まで走って帰ってきたわたしたち。
椋太朗に促されるまま走って来たのはいいけど、
なんで逃げる必要があったのか……。
「それに、さっきの男の人。アンタのこと知ってるみたいだったし」
門から出て来たあの男の人は、椋太朗の声を聞いて確かに、
椋様
って、呼んでいた。
それを聞いた椋太朗の表情は、どことなく曇ってるみたいで椋太朗らしくない。
「あのまま椿雪(はるゆき)に見つかってたら俺は連れ戻されてしまう。俺、まだ戻らへん」
椿雪ってのはさっきの男の人みたい。
その椿雪さんに見つかると、椋太朗はさっきの大豪邸に強制送還……。
……椋太朗が寝てる間に置いて来ようかな。門の前に。
「桜菜……今、怖いこと考えてるやろ?」
「…………」
チッ……。
勘だけは良いんだから。
何も言わずに目を逸らしたわたしの耳に、
「否定しろよっ! 桜菜ぁ~!!」
いつもみたいな無駄にうるさい声が聞こえてきた。