手のひら王子様
鬱陶しい鬱陶しい……って思いながら、
そんな椋太朗の姿を見てちょっと安心する。
多分、
こんな風に片時も離れずに誰かと居たことなんて無かったから。
すっかり椋太朗に対しての感覚が麻痺してるんだ…………忌々しいけど。
「桜菜~! 雨!!」
「あっ!!」
クッションの上に座っていた椋太朗が、立ち上がって窓の外を指差している。
その声でわたしは、慌ててベランダに飛び出した。
降り始めたばかりの雨はまだ小雨で、
夏の陽気と混じってムシムシとした空気を作り出している。
取り込んだ洗濯物を床に投げ入れて、しばらくそんな空を眺めていた。
片田舎にある実家は、ここより少しだけ涼しい。
団扇片手に、縁側に座る細い背中。
これをわたしは、いつもわざと視界から外してた……。
……やめやめ。
百合菜(ゆりな)のこと考えたって仕方ない。
考えたところで、わたしが百合菜を苦手に思ってることに変わりはない。
「桜菜……」
振り返ると、ベランダのドアの片隅でわたしを心配そうに見上げてる椋太朗が居た。
そんな椋太朗の姿を見てちょっと安心する。
多分、
こんな風に片時も離れずに誰かと居たことなんて無かったから。
すっかり椋太朗に対しての感覚が麻痺してるんだ…………忌々しいけど。
「桜菜~! 雨!!」
「あっ!!」
クッションの上に座っていた椋太朗が、立ち上がって窓の外を指差している。
その声でわたしは、慌ててベランダに飛び出した。
降り始めたばかりの雨はまだ小雨で、
夏の陽気と混じってムシムシとした空気を作り出している。
取り込んだ洗濯物を床に投げ入れて、しばらくそんな空を眺めていた。
片田舎にある実家は、ここより少しだけ涼しい。
団扇片手に、縁側に座る細い背中。
これをわたしは、いつもわざと視界から外してた……。
……やめやめ。
百合菜(ゆりな)のこと考えたって仕方ない。
考えたところで、わたしが百合菜を苦手に思ってることに変わりはない。
「桜菜……」
振り返ると、ベランダのドアの片隅でわたしを心配そうに見上げてる椋太朗が居た。